院長 漢方コラム

目からウロコの漢方➃〜症例からみる漢方治療〜

第4回 インフルエンザと漢方薬

 今年もまたインフルエンザの季節となりました。一般的な風邪では37℃台の発熱で、高齢者・基礎疾患をお持ちの方が余病を併発しない限り命を落とすことはまずありませんが、インフルエンザでは高熱などがみられ、インフルエンザ脳症、インフルエンザ肺炎などを発症して不幸な転帰をたどることも希ではありません。とくにハイリスク患者(喘息、糖尿病、心臓病、呼吸器疾患、免疫不全、慢性肝・腎疾患、妊婦、2歳以下、65歳以上)の方では注意が必要です。
 1918年に猛威を振るったスペイン風邪では世界で2~4千万人が死亡したと伝えられています。日本でも39万人が死亡したことが知られています。その主な原因は人体を守るべき免疫システムの破綻だと言われております。サイトカイン・ストーム(免疫機能の伝達物質であるサイトカインの嵐)と名づけられています。
 さて、インフルエンザに対しては何より予防接種が大切です。毎年、高校受験、大学受験の前日・当日に高熱を出して来院される不運な学生さんに同情してしまいます。罹ってしまったらタミフル、リレンザ、今年から使用可能になったゾフルーザなどがあることはご承知されていると思います。これらの治療薬により以前より治療が随分と楽になりました。ただし、これらの薬はインフルエンザの増殖を抑えるのが役目で、人体の免疫機能の正常化するわけではありません。

 一方、漢方薬もインフルエンザに対して有力な治療手段となっています。最も使用頻度が高いのが麻黄湯です。1800年前に書かれた傷寒論にはこのように書かれています。『太陽病、頭痛、発熱、身疼、腰痛、骨節疼痛、悪風し、汗なく喘する者は麻黄湯之を主る』太陽病とは「熱性疾患のはじめ」という意味で、インフルエンザの極初期の病態が書かれていると読めます。麻黄湯はインフルエンザの増殖抑制ではなく、インフルエンザに対抗する人の免疫機能を促進してサイトカインなどを適性化する役目があります。最近の研究でも図に示すようにタミフルやリレンザと同様の効果が認められています。麻黄湯は悪寒・無汗・ふしぶしの痛みの改善を目的として使用しますが、病状が違えば他の漢方薬を応用します。


その他の漢方薬がどんな症状のときに使われるかを解説します。
悪寒・無汗・項のこりがあればご存知の葛根湯
悪寒・発汗・ふしぶしの痛みであれば桂麻各半湯(麻黄湯+桂枝湯)
悪寒が強く・無汗で倦怠感が高度の場合には麻黄附子細辛湯
熱感・微発汗・頭痛で胃腸虚弱には桂枝湯
熱感・発汗・発熱があれば桂枝二越婢一湯(桂枝湯:越婢加朮湯=2:1に合方)
熱感・発汗・咳がつよければ麻杏甘石湯
まだまだラインナップがありますが、それぞれの病状に合わせた漢方薬が揃っています。

インフルエンザを抑える西洋薬、人体の免疫機能を活性化させてインフルエンザから人体を守る漢方薬となります。